観をまじ

い子供の前で破廉恥な行いはしないだろう。彼がそこまで非常識でないことは誠一もわかっているはずだ。渋々ではあるが認める方向に傾通渠 いているのを感じ、澪はここぞとばかりに大きく前のめりになる。
「行ってもいい?」
「……気をつけろよ」
「うん、ありがとう」
 彼が折れてくれたことに安堵し、小さく吐息を落として感謝の言葉を口にした。しかし、誠一の表情にはいまだに不安と不満が見え隠れしている。それでも会うことを了承くれた彼の信頼に報いるために、何事もなく無事に帰ってこなければとあらためて気を引き締めた。

 それほど昔のことでもないのに、随分と久しぶりのような気がする。
 澪は鬱蒼とした緑に囲まれた一軒家を見上げて感慨に耽った。そこは武蔵に一ヶ月ほど拉致監禁されていた場所である。家の外まじと観通渠察したのは初めてだが、木造の小さなロッジのような雰囲気で、まわりの風景にも違和感なく溶け込んで見える。ほとんど枯れ木しかなかったあの頃とは違い、瑞々しい新緑が芽吹き、雑多な草も生い茂り、生っぽい青草の匂いがあたりに漂っていた。
 何段かある木の階段をのぼって玄関の前に立ち、チャイムを押した。が、壊れているのか鳴っている気配はない。扉を強めにノックしてみても無反応だ。どうしたのだろうと思いながらドアノブをまわすと、鍵がかかっていなかったようで、そのまま何の引っかかりもなく扉が開いた。正面には毎日のように歩いた廊下が延びており、右側がお手洗いと風呂場で、突き当たりが澪の繋がれていた広い部屋になっている。
「武蔵、入るよ……?」
 声を掛けながら靴を脱いで廊下を進み、突き当たりの扉をそろりと開いた、その瞬間——。
 ドォオォォオン!!!
 轟音とともに目の眩むような光が襲いかかってきた。次の瞬間、視界のすべてが白に呑み込まれたが、どういうわけか衝撃も痛み通渠も感じない。反射的に床に倒れ込んで身を丸めていた澪は、あたりが静まると、扉の方におそるおそる怯えた目を向ける。
「澪?」
 そこからひょっこりと顔を覗かせたのは武蔵だった。彼はひどく驚いたように目を丸くして
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