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まるで酒飲みが

入ったころと桃色の


「わたしはね、お前を、惨い(むごい)目に遭わそうなどとは微塵も思ってはいないよ。雪華が大事に抱いてやってくれと頭を下げたから名乗りを上げたんだ。辛いのだったら、今日は何もせずに酌でもしてくれればいい。細雪、わたしは禿でから知っているお前が、とても可愛いよ。それとも、お前はわたしのことが怖いかい?」

「いいえ……!いいえ、澄川の旦那さま。勿体無いことでございんす。大事な旦那さまを細雪の初花を散らすお役に貸してくださった雪華兄さんの、お気持ちに応えてちゃんと粗相の無いようにお勤めできるか不安だったのでありんす。細雪が怖いのは、決して旦那さまではなく、自分の不調法でありんすぇ。」

「そうか……じゃあ、ここへおいで。わたしの口を吸ってくれるかい?」

「あい、旦那さま……」

おずおずとにじり寄った細雪は、澄川の頭を抱える二枚貝のような唇を開いて、そっと澄川の唇を吸い始めた、上……下……交互に柔らかくつついては逃げる細雪の唇を、焦れた澄川が、追い詰めて吸い上げる。

「……あ。」

緋襦袢の上に糸を引いた銀桟が落ちた。
じっと、澄川は細雪の顔を覗き込んだ。

「参ったね。酌でもしてもらおうと思っていたのに、本気になってしまいそうだ。」

「可愛がってくんなまし……旦那さま。細雪は旦那さまの胸で溶ける、春の雪になりとうございんす。」

「いい子だ。ちゃんと煽るすべも知っている。どうやら、雪華はいい先生のようだね。」

「あい。色々教えていただきんした。旦那さま、お胸に縋ってもよろしゅうございんすかぇ?」

「いいよ。……どうしたね?」

膝を進めて、澄川の懐にすっぽりと抱かれると、細雪は頬を寄せた。

「旦那さまの御胸にすっぽりと抱かれたら、懐かしい葉巻の匂いがいたしんした。奢侈(しゃし)品等製造販売制限規則が発令されてからは、我慢なさっていたようですけれど……懐かしい。」

「細雪のいい人が煙草を吸っていたのかい?妬けるね。」

「申し訳もありんせん。お(父)もうさ……父の香りがいたしんした。」

「父御か。」

澄川はまじまじと細雪の顔を見つめていたが、やがて愉快そうに声を上げて笑い出してしまった。 細雪は頬を染めて肩をすくめ、その場に固まってしまった。細雪は、うっかり気付かないで粗相をしてしまったと思ったらしい。声が上ずってしまった。
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